こんにちは、ねりきりです。
婚姻費用分担請求⑤私の主張書面(1)もと夫の主張への反論の続きになります。
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婚姻費用とは
夫婦は生活する上で平等でなければならないとされています。
その考えに基づいて、収入の多い側は収入の少ない側の生活費(婚姻費用)を、たとえ別居していても分担する義務があります。
婚姻費用分担請求は、その義務を果たさない人に生活費の支払いを求めるものです。
求めている側によほどの過失がない限り、裁判所は支払いを命じます。
「よほどの過失」というのは、例えば、夫に何の問題もないのに、恋人が出来たなど自分勝手な理由で家を出た妻が生活費を要求してきた、など。
一般人が聞いても「いくらなんでも虫が良すぎ」というもの。
もと夫の主張は、私に「よほどの過失」があるから婚姻費用を払う必要はない、というものでした。
本当にそうでしょうか。
婚姻費用額の計算
私の主張書面の中で、婚姻費用を求める文面は、もと夫のベンゴ氏の書面を参考に書きました。
一応プロの弁護士が書いたものですから、形式にのっとっているとは思うので、これから婚姻費用分担請求調停や審判を申し立てる人、申し立て中の方の参考になるよう、書面に書いた内容に近い形で書いていきたいと思います。
もと夫のざれ言に関わる部分はややこしくなるので整理しています。
また個人情報に関わる部分は省き、もと夫と私の収入も仮の金額を入れています。
第2「 第2婚姻費用の算定について」に対する反論(※「第1」は前回の記事になります)
1 「1 収入について」について
婚姻費用額の算定において,相手方はいまだ確定していない今年度の見込み年収を元とした560万円で計算しているが、すでに確定している前年度の年収600万円が用いられるべきであると考える。(※もと夫は私のせいで降格したので、年収が下がる予定だから、その見込み金額で計算するべきだと主張していました)
申立人の年収は,提出した資料により,平成〇年〇月から〇月の平均月収を元に120万円と算出した。
2 「 2 婚姻費用額」について
申立人は,当初,婚姻費用算定表を使用して婚姻費用額を求めたため,陳述書では10万円と主張したが,相手方の年収の理解に誤りがあった。
相手方の方針に従い,計算式によって正しい婚姻費用額を求めたいと考える。
ただし,相手方の婚姻費用計算式には重大な誤りがみられる。年収600万円(相手方計算式上は560万円)の義務者が,年収120万円の権利者に支払う婚姻費用が4万8千円とは,あまりにも低過ぎる。
これが万一意図的になされたことであったとすれば,悪質と言わざるをえない。
なお,正しい算定結果は以下の通りである。
(1)義務者の基礎収入
600万円×0.37=222万円
(2)権利者の基礎収入
120万円×0.41=49万2000円
(3)権利者世帯の割り当て分(年額)
双方の基礎収入合計額(222万円+49万2000円)×権利者側の生活費指数(権利者100+長女55+長男90)÷家族の生活費指数(権利者100+義務者100+長女55+長男90)≒192万6000円
(4)月額婚姻費用
192.6万円 - 49.2万円 = 143.4万円(年額)
143.4万円 ÷ 12 = 12万円
(5)結論
よって,本件における婚姻費用額は,月12万円が相当である。
婚姻費用計算式の解説
婚姻費用の計算式はかなりややこしいです。
興味のある方だけ、読んでくださいね。
上の式で、(1)の義務者は、婚姻費用を支払わなければいけない人、私の場合はもと夫です。
(2)の権利者は、婚姻費用を支払ってもらう人、私です。
黄色マーカーの数字は、基礎収入割合です。年収によって、そして給与所得者か自営業かでかけ率が下の表のように決まっています。
基礎収入割合(%)
給与収入(万円) | 基礎収入割合(%) | 事業収入(万円) | 基礎収入割合(%) |
~100 | 42 | ~421 | 52 |
~125 | 41 | ~526 | 51 |
~150 | 40 | ~870 | 50 |
~250 | 39 | ~975 | 49 |
~500 | 38 | ~1144 | 48 |
~700 | 37 | ~1409 | 47 |
~850 | 36 | ||
~1350 | 35 | ||
~2000 | 34 |
たとえば、もと夫の場合は給与所得で年収600万円だから、37%(0.37)になるわけです。
(3)権利者世帯の割り当て分は、夫婦(私ともと夫)の収入のうち、私と子ども達の世帯は年間いくらの生活費が割り当てられるべきか、という計算です。
夫婦それぞれの生活費指数を100%とすると、15歳以上の子の生活費は90%、14歳以下の子の生活費は55%とされています。
うちの場合、ポテチは15歳以上、いちごが14歳以下だったので、私の世帯の生活費はもと夫と私の年収の合計×(100+90+55)をもと夫を入れた全体の生活費(100+100+90+55)で割った金額になるわけです。
(3)で出したのは年額なので、(4)で12で割った金額が1ヶ月分の婚姻費用となります。
※令和元年12月23日の新算定表発表により、上記の表の数値が変更されました。
現在は以下の通りになっています。
自力で計算する方はこちらの表を使用してください。
給与収入(万円) | 基礎収入割合(%) | 事業収入(万円) | 基礎収入割合(%) |
0~75 | 54 | 0~66 | 61 |
~100 | 50 | ~82 | 60 |
~125 | 46 | ~98 | 59 |
~175 | 44 | ~256 | 58 |
~275 | 43 | ~349 | 57 |
~525 | 42 | ~392 | 56 |
~725 | 41 | ~496 | 55 |
~1325 | 40 | ~563 | 54 |
~1475 | 39 | ~784 | 53 |
~2000 | 38 | ~942 | 52 |
~1046 | 51 | ||
~1179 | 50 | ||
~1482 | 49 | ||
~1567 | 48 |
生活費指数も変更されています。
夫婦それぞれの生活費指数を100%とすると、15歳以上の子の生活費は85%、14歳以下の子の生活費は62%とされています。
もと夫のいかさま
もと夫の主張書面で、ベンゴ氏は上記のような計算式で婚姻費用額を出していました。
でも、きちんと算出した婚姻費用額が12万円なのに、ベンゴ氏の書面では4万8千円。
あまりにも違いすぎますよね。
どういう計算をしたら、こうなるのでしょうか。
ベンゴ氏の計算式
まず、(1)のもと夫の基礎収入は、「今年は年収が下がる見込みだから」560万円で計算し207万2千円としていました。
これはまあ、許せる範疇です。
(2)の私の基礎収入はそのまんま49万2千円。
(3)権利者世帯の割り当て分(年額)
ベンゴ氏が計算式を操作したのは、ここでした。以下のような式を書いてました。
双方の基礎収入合計額(207万2千円+49万2000円)×権利者側の生活費指数(長女55+長男90)÷家族の生活費指数(権利者100+義務者100+長女55+長男90)≒107万8000円
本来の式と、どこが違うかわかりますか?
もと夫とベンゴ氏の悪質性
正解はこちら。
双方の基礎収入合計額(207万2千円+49万2000円)×権利者側の生活費指数(権利者100+長女55+長男90)÷家族の生活費指数(権利者100+義務者100+長女55+長男90)≒107万8000円
赤色マーカーの部分がありません。
私の生活費が0%で計算されてるの。
つまり、私は仕事して収入は得ても生活するな、ってこと。
もと夫の主張はこうでしたよね。
「もと夫が私の婚姻費用を負担する義務はない。子ども達の養育にかかる費用のみ負担する。」
だったら、もと夫は養育費の計算式で金額を出すべきでした。
そしたら金額は8万3千円になったはずです。
しかし、もと夫が実際に主張したのは、4万8千円。
あまりにも低過ぎます。
これは、養育費の算定式にある「親は子どもに自分と同水準の生活を送らせる義務がある」部分を投げ捨ててるから起こったことです。
つまり。
もと夫は「子ども達の養育にかかる費用は負担する」と言いながら、子ども達が困窮してもお構いなし、と主張したってこと。
こんなこと、許されるはずないですよね(怒)。
それにしてもベンゴ氏には驚きました。
裁判官がこんなフェイクに騙されると思ってるのでしょうか。
それとも法律の世界では、弁護士というものはあわよくば裁判官を引っかけようとするものなんですかね。
それともそれとも、私が気付かなければ、裁判官はベンゴ氏の計算式を通したのかな。
怖いですね…。
婚姻費用算定について私が思うこと
現在、裁判所で用いられている養育費・婚姻費用算定表は、簡易算定表です。
養育費や婚姻費用の原理原則を元にした計算式は上述したようなものですが、かなりややこしいので、この簡易表がよく使われているんです。
離婚調停などでは、調停委員に「金額を譲歩して早く決着をつけた方がよい」などと説得され、妥協した金額に落ち着くこともあるのではないでしょうか。
でも私、弁護士のブログで、「計算式付きで要求額を入れた主張書面をびしっと出して、早期に調停に片を付ける」、なんて文章を読んだことがあって。
この計算式で示した婚姻費用額をびしっと主張すれば、調停委員は「譲歩しなさい」とは言わないのかな、と考えてしまって。
だってね、
簡易算定表の金額って2万円も幅があるでしょ。
だから、「安い方で」なんて言われる余地が生まれるんですよね。
きっちり計算した金額で請求すれば、調停不成立で審判になったとしても、減額・増額の要件がなければ、普通にその金額に決まります(と思います)。
妥協する必要なんてないんですよね。(時間がかかるかもしれないし、その後、相手がきちんと支払ってくれるかどうか、という問題は残りますが…)
そもそも調停委員って、人によっては全く当てにならないので、言いなりになるのは怖い気がします…。(これについては、こちらの記事にちょっと書いてます↓)
婚姻費用や養育費を妥協するにしても、後で悔やまないような判断をしたいですよね。
今後の生活に関わることですから、正確な金額を知って、弁護士相談などもして、しっかり情報を集めてくださいね。
もちろん、自分は婚姻費用や養育費に頼らない、とにかく早く離婚したい、という方には必要ないことですけど。