こんにちは、ねりきりです。
録音・録画データは証拠として確実。
そんなイメージじゃないでしょうか。
けれど私の離婚裁判で、もと夫はたくさんの音声データを提出しましたが、裁判官はそれらを全く証拠採用しませんでした。
実は音声データを証拠にするのって、結構ハードルが高いみたいです。
家族や離婚体験談の人物紹介はこちら。
録音・録画データの証拠性
DVやモラハラが争点となる裁判などでは特に、モラハラの現場を録音して証拠にしたいと考えることが多いんじゃないでしょうか。
テレビのワイドショーなどで、モラハラの音声や映像が流れるとかなりのインパクトですよね。加害者への批判が一気に高まります。
録音・録画された音声や映像って鉄板の証拠のように思えます。
でも、裁判で録音・録画したデータを証拠採用してもらうためには、きちんとした手順を踏まなければなりません。
短いフレーズを繰り返し放送すればOKのテレビとは違うんです。
文書化が必須
裁判所にどのような証拠を提出するにあたっても、文書化が必要です。
CD-ROMやメモリーカードなどで音声データを提出することはできますが、裁判官がそれを聞いてくれているかはわかりません。
文書化して初めてきちんとした証拠といえるんです。
音声データを証拠にする手順
録音・録画する
まずは証拠となる場面の録音・録画を行います。
ただし、日常生活ではいつ、どんな場面で、どんなコトが起こるか予測できません。
録音・録画データの収集はなかなか難しいんじゃないでしょうか。
録音・録画していることを知った相手が機材を取り上げたり、逆上して暴力をふるったりというリスクだってあるでしょう。
くれぐれも慎重に行ってくださいね。
ちなみにもと夫は、おおっぴらに私にスマホを向けていました。
暴力を恐れる必要がなかったからでしょう
男性の方がリスクを感じず証拠集めしやすいといえるかもしれませんね(怒)
演出は厳禁
証拠となる場面を録音・録画するのは難しい。
だからといってモラハラ場面を録るために、相手を挑発して暴力や暴言を引き出してはいけません。
裁判で「煽られた」「録音するために演出された」と相手に反論されればそれまでですし、作為的に録音・録画されたものは証拠性がかぎりなく低いと思います。
反訳する
音声データを証拠にするためには必ず「反訳」という作業をしなくてはなりません。
反訳とはいわゆる「テープおこし」です。
録音された言葉のやりとりを、文字に起こして文書化すること。
これがかなり骨の折れる作業です。
なお、もとになる録音・録画データが長いからといって、一部分だけ切り取ったりしてはいけません。
出来事の前後関係がわからなければ、裁判官は事実認定できません。
それに、自分に都合の悪い部分を切り取っているのだろう、と相手に反論されてしまいます
夫婦ゲンカ中に相手が放った暴言のみを切り取ったり、自分の発言は削除したり、なんていうのは論外です。
証拠になりません。
証拠性を確かめる
録音し、反訳も出来た。
しかし、それが裁判に通用する証拠である保証はありません。
夫婦のやりとりをみた(読んだ?)第三者が、
「これはまぎれもなくモラハラだ」
と判断できるかどうか。
激しい暴力や耳を覆うような罵詈雑言など、明らかなケースであればともかく、日常生活のやりとりがモラハラであるかどうかなんて、他人にはわかりません。
当事者にとっては「確実に」モラハラだと断言できるやりとりでも、夫婦のこれまでの経緯を知らない人にはピンとこないことも多いのです。
まずは音声データと反訳文をみてもらって、弁護士に相談してみてくださいね
反訳文の書式と証拠説明書
音声データを裁判所に提出するときの書式と形式です。
必ずこうと決まったものではありませんが、参考までに…。
反訳文
反訳文に決まった書式はないようです。
でも、文頭に以下の内容を書いた方が親切だと思います。
- 録音・録画の対象者(「〇〇と△△の会話」など)
- 録音・録画の日時
- 録音・録画場所
- 録音・録画者
反訳文にはセリフが誰のものかわかるよう、ひとつひとつに名前をふっていきましょう。
「あー」とか、「えーと」などの意味のない短い言葉も全て書きいれましょう。
録音・録画したデータに忠実であることが大切です。
聞きとれないセリフもあると思います。
想像で補わず、・・・とか×××などの文字を部分的に入れて、聞き取り不可能であることを示しましょう。
<例>
証拠説明書
実際の音声が入ったメディア(CD-ROMなど)とともに反訳文を提出します。
証拠説明書には、他の証拠と同様に以下の内容を書きます。
- 証拠の標目(タイトル)
- 原本か写しかの区別
- 証拠の作成日(録音した日)
- 作成者(録音した人)
- 立証趣旨(何を証明するために提出するか)
<例>
※あなたが原告の場合は「甲」、被告の場合は「乙」になります。
もと夫の音声データ
もと夫は多くの音声データを裁判に提出しました。
しかし、それらについての裁判官の見解はこうでした。
「このような証拠の出し方では事実認定できない」
裁判で取り上げられることはありませんでした。
もと夫がどんな出し方で音声データを裁判所に提出したのか、反面教師になると思うのでいくつか例をあげようと思います。
特徴
もと夫の音声データの特徴はこんなでした。
- 数十秒の細切れ
- ひとつの証拠の反訳文はA4用紙1枚~2枚ほど
- ひとつの場面の音声を複数に分けたりもしていた
もと夫の立証趣旨に合う私のセリフを中心に、ほどよいところで音声がフェードアウトしてました。
明らかに編集してました。
実際のデータ
以下は、もと夫が提出した音声データのうちのほんの一例です。
①私といちごが母子ゲンカしてる場面
〔立証趣旨〕被告(私)が長女(いちご)に対し、体罰を加えたこと…だそうです。
〔私の反論〕被告(私)が勉強を教えている際、互いに感情的になって口論となった場面を録音したものと思われる。体罰ではない。
原告(もと夫)はその前後にある母子間の長いやりとりのうちわずか38秒間を切り取って、被告があたかも長女に体罰をしているかのような印象を与えようとしている。なお、長女は被告と体格は同じくらいで、空手経験者である。
いちごの体格や空手経験者のくだりは、いちごと顔を合わせる機会のない裁判官が、いちごを必要以上に小柄なか弱い少女だと想像するのを防ぐために書き添えてもらいました。(もと夫も承知でしょうが、いちごは大人しく体罰されるような娘じゃありませんから。笑)
②私がいちごに勉強を教えている場面
〔立証趣旨〕被告(私)が思うように勉強できない長女(いちご)を罵倒したこと
〔私の反論〕罵倒していない。被告が当時、計算問題の式を省略してはミスを繰り返す長女にきちんと書くよう指導している場面を録音したものである。
被告と長女は普段は仲がいいが、長女は思春期で、勉強が上手くいかなくなると反抗的な態度をとるため、時に被告も感情的となり、声が大きくなることもある。
思春期の娘の勉強をみるのって本当に大変でした。汗
何度もぶつかりましたが、子どもと真剣に向き合っているからこそケンカするんです。
子どもの世話をロクにしていない人はケンカすることもないでしょうね。
③私ともと夫が言い争いしている場面
〔立証趣旨〕被告(私)が原告(もと夫)を窃盗であると言い、話合いに応じなかったこと・・・だそうです
〔私の反論〕原告(もと夫)は夫婦間のやりとりのごく一部を切り取って、あたかも自分が話合いを求めてきたかのような主張を展開しているが、実際に、夫婦間の話合いに応じてこなかったのは原告である。
問題点
もと夫の提出したデータには以下のような欠点がありました。
だから、証拠採用されなかったのだと考えられます。
- 短かく切り取られ、編集されていた
- 前後関係が不明だった
その上、もと夫は反訳文を改竄して、私のセリフをいちごのもののように見せかけたり、何でもない私のセリフをきつい文言に変えたりしてました。
印象操作です。
裁判官はいちいち音声と反訳文を照らし合わせて確認しないだろうと考えてやったのかもしれませんが、非常に悪質です。
もちろん、裁判中に指摘して反論しました
裁判で争っている相手との過去のやりとりを聴くなんて苦痛でしかありませんが、確認は絶対するべき、と思った出来事でした。
私の考え
私がここで強調したいのは、一般人が考えているほど録音・録画データは鉄板の証拠ではない、という事実です。(モラハラの証拠という意味で、です)
夫婦ゲンカの場面や相手のきつい物言いをかき集めれば有利になると考えていませんか?
また、夫婦ゲンカした時の自分のきつい言葉や、怒鳴っているとき、怒っているときの強い口調、そんな録音を裁判に提出されたら、圧倒的に不利だと思っていませんか?
そうとは限りません。
ケースバイケースです
実際、私も裁判に大量の音声データを提出されて、最初はビビりました。
録音されていた私のセリフは決してお行儀のよいものではありませんでしたし(だってケンカの場面だからね)、こんな大量の音声を聞かれて、裁判官に人間性を疑われる、不利になるんじゃないかと思いました。
でも。
人はいつでも品行方正で生きてるわけじゃありません。
怒りもすれば、ケンカもします。
その理由が裁判官を納得させるものであれば、きついセリフもさして問題にはされません
もと夫が有責配偶者でない私に約600万円も慰謝料請求したのは、大量の音声データを集めたことで、自分が有利だという間違った認識を持ってしまったからではないか、と思います。
ベンゴ氏も未熟だったので、間違いを増長させたのかもしれません。(または日当を稼ぐために、もと夫の思い込みを訂正しなかったか、ですね)
けれど、意味のない音声データを収集して「精神的虐待」だとか「モラハラ」をでっち上げようとしてもムダということです。
ウソは真実になりません。
ただし、本当にDVやモラハラがある場合には録音・録画データは心強い証拠にはなると思います。
数を集めれば、日常的に暴力・暴言が行われていることを立証する力になるでしょう。
でも、録音・録画が元で暴力を受けるようなことには決してならないように。
無理しないで。
くれぐれも気をつけてくださいね。
私としては、できれば証拠集めより身の安全を優先してもらいたいです…。