婚姻費用の計算式と主張書面テンプレート(令和元年新算定表対応版)

Steve BuissinneによるPixabayからの画像 離婚
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こんにちは、ねりきりです。

婚姻費用分担請求調停や審判で使える主張書面用のテンプレートです。
似た内容を体験談で書きましたが、旧算定表で解説していたことと、私の主張書面がベースでややこしかったため、わかりやすく(?)作り直しました。

家族や離婚体験談の人物紹介はこちらをどうぞ。

人物紹介
こんにちは、ねりきりです。 当ブログに時々出てくる登場人物達のご紹介です。 家族 ねりきり 管理人 …
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婚姻費用とは

夫婦は生活する上で平等でなければならないとされています。

その考えに基づいて、収入の多い側は収入の少ない側の生活費(婚姻費用)を、たとえ別居していても分担する義務があります。

婚姻費用の義務は、生活保持義務と呼ばれるものです。
家族や親族に対する扶養義務にはもう一つ生活扶助義務というものもあります。

生活保持義務

たとえ生活に余裕がなくても得ている収入の中から必ず果たさなければいけない、という性質の義務です。
例えるなら、たった一つのパンも必ず分け合って食べなさい、というものです。

夫婦間や未成熟子(経済的にまだ自立できていない子ども)に対する義務は生活保持義務で、婚姻費用養育費はこれにあたります。

収入が少なくて養育費をこんなに支払ったら生きていけない。
オレに死ねというのか

よく婚費や養育費の未払い者がこんな言い訳をしますが、死んでいない限り免れることはできません。

婚姻費用や養育費の支払い義務はとても厳しいものなのです。

生活扶助義務

自分の生活に余裕がある範囲内で行えばよいとされる、いわば努力義務です。
例えばたった一つのパンしか持ってない人がそれをわざわざ分け与える必要はありません。
おなかいっぱい食べて、それでもパンが余ってるなら分けてあげてね、という性質のものです。

老親や兄弟姉妹間などの扶養義務はこれにあたります。

生活保持義務は生活扶助義務に優先します

もと夫は裁判でこんな主張をしました。

親の生活費を援助しているから養育費は減額してほしい

もちろん通りませんでした。
子どもへの援助は生活保持義務、老親への援助は生活扶助義務、子どもへの援助は親より優先されるからです。

自分を育ててくれた家庭より自分が作った家庭を大事にすべし
それが裁判所の考えということですね。

親への援助は、婚費や養育費を支払ってなお余力がある場合に、自分自身の生活費を削ってやればよいことなのです。

同様の主張をされている方、減額に応じる必要はありません。

減額に応じるべきか

婚費や養育費の調停で減額を求められるのはよく聞く話です。

「年収が下がる」「住宅ローンを支払ってるから算定表の額は払えない」「妻がもっと働けば稼げるはずだ」などと言われたり。

調停委員も「相手方はこの金額なら払えると言っている」「高額の婚姻費用が決まっても支払ってもらえなければ同じ」などと、譲歩を迫ってきたりします。

婚費の減額には応じなければならないのでしょうか。

算定表の問題点

養育費・婚姻費用は双方の年収がわかれば、裁判所の算定表ですぐに求めることができます。

しかし、その算定表が曖昧です。
年収は25万円ごとの区分けですし(給与所得の場合)、上限に合わせるか下限に合わせるかで2万円も差がつきます。

また、子どもの人数が4人以上の場合は使えません。

参考|平成30年の算定に関する実証的研究)の報告について:婚姻費用・養育費算定表

調停委員の問題点

調停委員は社会経験の豊富さや、地域社会で活動してきたことなどを理由に、社会の各分野から選ばれた人たちです。
しかし、そのために法律の知識がない人もいます。

私は調停で調停委員に算定表の見方を間違って教えられたため、当初、本来の金額よりかなり低額の婚姻費用を主張してしまっていました。
調停が不成立になったおかげで誤りに気づけましたが、そうならなかったらと思うとゾッとします。

人の生活がかかっているのですから、調停委員はきちんと勉強して欲しいものです。

私の考え

理由が不明瞭な減額に応じる必要はない

上記で挙げた減額要求には以下のような答え方が出来ます。

「年収が下がる」
→実際に年収が下がることを証明する資料を提出してください。

「住宅ローンを支払ってるから算定表の額は払えない」
→住宅ローンの支払いは住宅の名義を持つ人の資産形成という側面もあります。
ローンを支払っている人と住んでいる人が異なる場合などは考慮されることもありますが、ローン全額を差し引かれることはないようです。
いずれにしろ、支払いを求める側が自ら大幅減額してあげる必要はないのかな…と思ったりします。

「もっと働けば稼げるはずだ」
→婚費の算定は、将来の憶測ではなく今確定している年収を元にされるべきです。
将来、本当に年収に変化があって金額を変えて欲しいと望むなら、支払う側が減額調停を申し立てればよいのです。

「相手方はこの金額なら払えると言っている」「高額の婚姻費用に決まっても支払ってもらえなければ同じ」
→経験的に調停委員の言いなりにならない方がよい…と私は思ってしまってまして。汗
よく考えて自分で決断されることをおススメします。

そもそも裁判所は審判になれば、特別な事情がない限り、算定表の金額から逸脱した決定はしないようです。
まれに偏った結果が出たとしても、抗告すれば高裁で本来の金額に修正される可能性が高いと思います。

調停で大幅な減額に応じたり、揉めて長引くくらいなら、審判にして算定表通りの金額に決めてもらった方が良いのでは、というのが私の考えです。

※支払義務者が自営業の場合は異なります。

養育費・婚費は計算式でも求められる

実は養育費・婚費を1000円単位で求めることができる計算式があるのです。
それなら余計な減額に惑わされずにすみます。

ある弁護士のブログでこういう文章を読んだことがありました。

「調停でごねられたらさっさと審判にした方がいい。計算式をビシッと出せばそれで決まりだ」

実際、私の婚姻費用分担請求審判では計算式を出したため、ビシッと婚費が決まりました。
迷いがなくなるし納得できるので、計算式で婚費を出す意味は大いにあると思っています。

でも、この計算式、なかなかややこいので素人は理解するのが大変なんです。(大変だからこそ算定表があるんだものね)
それに、計算式で金額を出したとしても、どうやって主張書面に書けばいいかわからないという方もいるかも。

そこで、調停や審判で使える主張書面用のテンプレートを作ることにしました。(前置きが長いですね。すみません。汗)

主張書面テンプレート

以下のモデルケースで主張書面を作成した場合の例になります。
あとで詳しく説明しますが、数値やお子さんの人数などは、ご自分の状況に合わせて計算式を修正してくださいね。


申立人=婚姻費用を請求している人、つまり支払われる側
職業 パート
年収 昨年は100万円
別居後仕事を増やしたため現在は月収約12万円。年収も増える見込み
同居の子 2人(高校生16歳、小学生12歳)

相手方=支払義務者、つまり支払う側
職業 会社員
年収 500万円
同居の子 なし

テンプレート

主張書面

第1 婚姻費用の算定について

1 申立人の収入
令和2年1月から5月までの給与の合計は60万円であり(甲1)、1ヶ月平均が12万円であることから、1年間の総収入を144万円(12万円×12ヶ月)とする。

2 相手方の収入
令和元年の源泉徴収票によれば、相手方の1年間の総収入は500万円である(甲2)

3 婚姻費用額
申立人と相手方の総収入および子らの年齢(長男16歳、長女12歳)に基づき裁判所算定表によって婚姻費用を下記の通り計算した。

(1)義務者の基礎収入
500万円×0.42=210万円

(2)権利者の基礎収入
144万円×0.44=63万3600円

(3)権利者世帯の割り当て分
双方の基礎収入合計額(210万円+63万3600円)×権利者側の生活費指数(権利者100+長男85+長女62)÷家族の生活費指数(権利者100+義務者100+長男85+長女62)=194万5819円

(4)月額婚姻費用
(194万5819円-63万3600円)÷12ヶ月=10万9351円

(5)結論
相手方の支払うべき婚姻費用額は月10万9000円が相当である。

以上

計算式の解説

(1)義務者の基礎収入

まず相手方(婚費を支払う側の人)の基礎収入割合を下表から探します。

モデルケースの場合、相手方は給与収入で500万円なので基礎収入割合42%(0.42)をかけた金額が基礎収入になります。

給与収入(万円)基礎収入割合(%)事業収入(万円)基礎収入割合(%)
0~75540~6661
~10050~8260
~12546~9859
~17544~25658
~27543~34957
~52542~39256
~72541~49655
~132540~56354
~147539~78453
~200038~94252
~104651
~117950
~148249
~156748

(2)権利者の基礎収入

申立人(婚費をもらう側の人)の基礎収入割合を同じ表で探します。

モデルケースの場合、申立人の見込み年収は給与収入で144万円なので基礎収入割合44%(0.44)をかけた金額が基礎収入になります。
※別居後も年収に変化がない方は、昨年の源泉徴収票の「支払金額」を元にすれば大丈夫です。

(3)権利者世帯の割り当て分

夫婦合わせた総収入(基礎収入を合わせた金額)のうち、婚費をもらう側に割り当てられる生活費がいくらになるかを計算しています。

まず子どもの年齢に合わせて、生活費指数を割り当てます。
生活費指数は親を100とした場合、子どもは何割の生活費が必要かを示したものです。

生活費指数 0~14歳の子は62、15歳以上の子は85

あなたの子どもの人数や年齢に合わせて赤色マーカーの部分を変化させてくださいね。

双方の基礎収入合計額((1)+(2))×権利者側の生活費指数(権利者100+子供の生活費指数)÷家族の生活費指数(権利者100+義務者100+子供の生活費指数)=権利者世帯の割当分

  • 0~14歳の子ども(男の子)が1人の場合は…
    +長男62
  • 15歳以上の子ども(女の子)が1人、0~14歳の子ども(男女)が3人の場合は…
    +長女85+長男62+次女62+三女62

(4)月額婚姻費用

(3)-(2)を12ヶ月で割ることで、月々支払われるべき婚費の金額を計算しています。

(5)結論

100の単位を四捨五入します。

その他

黄色マーカーの「甲1」「甲2」の文字は、主張書面とともに提出する証拠の通し番号になります。
この場合は年収を裏付ける書類(給与明細や源泉徴収票のコピーなど)が想定されます。

また、婚費以外に主張すべきことがあるときは、「第2」「第3」など項目分けして文章を追加してください。
その際、婚費の計算式は後ろにもってくるなどバランスを考えて調整してくださいね。

証拠の提出方法など、詳しくはこちらの記事を参考にしてください。↓

主張書面の書き方 素人が自力で作成するために
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使用上のご注意

このテンプレートは司法研修所編「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」で明らかにされている標準的算定方式による計算方式を用いています。

私の婚姻費用分担請求審判でベンゴ氏が提出した主張書面や、審判書、裁判の判決書などを参考にしました。

しかし、あくまで私という素人が作成したものですから、思い込み等で誤っているところがあるかもしれません。
あくまで自己責任での使用をお願いいたします。
(私自身、裁判所に書面を提出した際には、弁護士の有料相談できちんと書けているか読んでもらいました↓)

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また、子どもが私学に通っている場合や持病のある子どもの治療費、住宅ローンの支払い…などなど特別な事情があって増額を求める場合は、この計算式でビシッと婚姻費用を出すことはできません。
弁護士に相談されるのが賢明です。

とはいえ、出来るだけ誰かの参考になるようなものにしたいと考えておりますので、お気づきの点等ございましたら、ご指摘いただけるとありがたいです。

あなたが早く安心して生活できるようになることを心から願っています。

※婚費や養育費の自動計算をしてくれる弁護士作成のホームページがたくさんあります。
 今回、このテンプレートを作成するにあたって、モデルケースの婚費をあちこちで計算してみたのですが「8万円~10万円」と出るページ「10万円~12万円」と出るページ、どちらもあって「?」となりました。
 ちなみに、実際の算定表で確認したら「10万円から12万円」でした。
 計算式を用いた細かな数字が出るホームページもあります。
 もし養育費や婚費を確認されたい時は、やはり裁判所の算定表を見るか、計算式で出してくれるページを利用されることをおススメします。

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