【賃貸住宅の退去トラブル】原状回復費用の過剰請求をはねのけ敷金を全額取り戻したお話①

PexelsによるPixabayからの画像 トラブル
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こんにちは、ねりきりです。

またもや久しぶりの投稿になってしまいました。

実は緊急事態宣言下の6月半ば、母が亡くなりました。
それと同時に長年売りに出していた実家のボロ家の買い手が現れ。
母の死亡後の手続きと相続登記に奔走し、職域でコロナワクチンを接種したり、非常に目まぐるしい日々だったのですが…

母が亡くなるまでお世話になっていた介護施設と退去トラブルになったことはホヤホヤのトピックスです。汗

ツイッターでもリアルタイムで呟いていたのですが、ようやく解決の目途がついたのでまとめることにしました。

老人ホームの退去トラブルは近年増えているそうです。

母の施設との退去トラブルは賃貸住宅の退去トラブルと内容がほぼ同じでしたので、今回私が学んだことは多くの方の参考になるのではないかと思います。

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経過

母の死と施設からの退去

母は隣県の介護施設に入所していました。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)のワンルームタイプ(洗面・トイレ付)の部屋です。

母の容態が悪化したと連絡を受けたのは6月半ばの日曜日。
しかし私は仕事ですぐに駆け付けることができず、モロモロあって母の死に目には会えませんでした。

コロナ禍のため施設は基本的に立ち入り禁止、退去も施設の方に荷物を運び出していただいて便利屋さんに不用品を処分してもらう…という慌ただしいものでした。

実は母が亡くなった当日からケアマネに度々プレッシャー(?)をかけられてたんですよね…。

お母さんの部屋ですが壁にをあけられてますよね。の色も変わってますし、原状回復費用は敷金から差し引かせていただくことになります

母は施設に9年間居住していたので違和感を覚えました。
なぜって私、不動産会社の人に聞いたことがあったんです。

5年以上住んだら原状回復費用はほぼタダですよ

そもそも母は新築時から入所していたので、畳の色が変わったのなんて当たり前です。

原状回復には経年劣化は含まれないことを知らないの?

警戒心MAXになった私は、退去の確認のため母の部屋に通された時に、ケアマネの目の前で部屋の隅々の写真を撮ったりしました。
(この時もケアマネに上記と同じプレッシャーをかけられたから。それに、それまでは施設内への立ち入りを渋っていたくせに、なぜかこの時はすんなり入らせてもらえたのが違和感だったので)

これから戦うことになるかもしれないから証拠は必須!

離婚裁判を経験したおかげで私、リスク管理能力が格段にアップしてるんですよねw
いいんだか、悪いんだか…

施設から連絡。原状回復費用を追加請求します!?

退去から約一ヶ月後、施設から以下の内容について連絡がありました。

  1. 日割り家賃(6月分)の請求
  2. 施設のかかりつけ医や薬局への支払い金額
  3. 原状回復費用の精算

1と2は予想の範囲内だったのですが、3の内容を聞いて驚きました。

ハウスクリーニング、畳の表替え、壁穴の補修費用などで敷金15万円では足りませんでした。追加で請求させていただきますね

退去日にクギを刺したのにやっぱり請求してきたのね。

畳の色が変わっているのは経年劣化ですよね…

反撃① 国土交通省のガイドラインを送付しました

その後はツイッターで相談したりネット検索したり。
調べれば調べるほど施設側の請求には根拠がないことがわかりました。

賃貸住宅の退去トラブルは多発しているため国土交通省から「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が出ています。

消費生活センターにも相談したところ

高齢者住宅の退去トラブルなので賃貸住宅の原状回復ガイドラインは適用されないのでは?

こう言われた時は絶望的な気持ちになりましたが、国民生活センターから「有料老人ホームの契約トラブル」という資料が出ているのをすぐに見つけることができました。

その中にはしっかり以下のような記述がありました。

有料老人ホームの原状回復費用については、設置運営標準指導指針において、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」を参考にすることと記載されています。このガイドラインでは、経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれることが示されています。これまでは、ガイドライン上の明示だけでしたが、2020 年 4 月施行の改正民法で、「通常の使用及および収益によって生じた賃借物の損耗並ならびに賃借物の経年変化」は原状回復の対象とならないことが明記されました(改正民法621条)。

つまり、老人ホームも原状回復のトラブルに関しては国交省のガイドラインが適用されるってことよ

ちなみに国民生活センターは全国にある消費生活センターの中心となる組織のようです。

独立行政法人国民生活センターは、「消費者基本法」に基づき、国や全国の消費生活センター等と連携して、消費者問題における中核的機関としての役割を果たしています。このために、消費生活に関する情報を全国の消費生活センター等から収集し、消費者被害の未然防止・拡大防止に役立てています。
参考:国民生活センターの紹介-業務案内

施設へのメール

原状回復費用を追加請求すると言われたわりには金額すら教えてもらえていなかったので、以下のような内容のメールを送りました。

お世話になっております。
以下のご請求の件について、明細と金額の提示をお願いいたします。
  • 日割家賃
  • かかりつけ医、薬局等の清算金
  • 原状回復費用の不足分
また原状回復費用について貴社との認識にかなりの食い違いがあるように思います。
私としては国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」に基づいたご対応をお願いしたく存じます。
ご一読いただき、これに沿った請求明細書をいただけますようお願いいたします。
なお、現在消費生活センターに相談しております。
国民生活センターから「有料老人ホームの契約トラブル」という資料が出ているそうですのでガイドラインと合わせてお読みいただけましたら幸いです。

ガイドラインと国民生活センターの資料のURLも添付しました。

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施設の回答① 請求額が大幅ダウンしました!

2日後、請求明細が届きました。

なんと!
敷金15万円に加えて追加請求されるはずだったのに「ハウスクリーニング費用のみ差し引いて残金は返金させていただきます」とのことでした!!

先日のお電話では壁穴の補修費用・畳の表替え費用・ハウスクリーニング等で15万円を超えるとのお話でしたよね?

さすがにツッコみましたよ。

私の説明不足でした。申し訳ございません

ふうん。説明不足…ねえ…

反撃② 敷金全額の返金を求めました

一時は言われた通りハウスクリーニング費用を払って手打ちにしようかな、と思ったんですけども。
やっぱりやめました。

これ、私が何も言わなかったらフツーに払わされてたよね。
施設は今までもこういうことを繰り返してきたの?
それとも私が女だから、シングルマザーだからこういうことをしてきたの?

考えれば考えるほどこんなことを容認してはいけないという気持ちが強くなったんです…。

施設へのメール

いただいた請求明細について当方の考えを書面にまとめました。
ご回答をよろしくお願いいたします。

裁判の主張書面のような文書を送りました。
「説明不足でした」なんて言い訳をできないよう、施設側の請求に正当性がないことを出来るかぎり簡潔に書きました。
平成17年12月16日最高裁判例「敷金返還請求事件」にも言及しました。
いざとなったら裁判も辞さない…という意思表示です

最高裁判例「敷金返還請求事件」とは

平成17年12月16日最高裁判例「敷金返還請求事件」では以下の内容が明示されています。

  • 借りた人は通常の使用で生じた劣化や損耗を原状回復する義務はない。
  • 借りた人に通常以上の原状回復義務を負わせるためには、具体的で明確な契約と合意が必要である。

私たち消費者にとって非常に役立つ重要な判例です。

施設の回答② 敷金が全額返金されることになりました!

もはや「説明不足でした、申し訳ありません」なんて言い訳もありませんでした。

そりゃそうでしょう。
施設が出してきた請求書に真っ向から正しく反論したのですから。

今回のトラブルで私が学んだこと

一番大きかったのはこれを知ったことです。

建物の賃貸借において、賃借人には通常使用による劣化・損耗の原状回復義務はない。

原状回復って曖昧ですよね。
賃貸物件から退去する時には「元の状態に戻してください」と普通に言われたりしますし、何もかもきれいにしなくちゃいけない気持ちにさせられます。

でもね「元の状態」は「新品の状態」ではないんです

ガイドラインや最高裁判例ではこの曖昧な部分が明確に説明されていました。

次回は、私がなぜ自信を持って敷金の全額返金を求めることができたか、実際の賃貸契約書や私が施設に送った書面などを例にさらに詳しく説明したいと思います。

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